提携事例10
AI半導体と医療化学メーカーデンカとスマート呼吸器ケアのパイオニア Aevice Health社の提携事例


〜化学大手のデンカ、AIスマート聴診器開発のシンガポールAevice Healthと提携 呼吸器疾患の遠隔モニタリング領域へ本格参入〜
概要
デンカ株式会社は、1915年の設立以来培ってきた無機・有機化学を基盤に、電子・先端プロダクツ、ライフイノベーション、エラストマー、インフラ、ポリマーなど幅広い事業を展開する日本の総合化学メーカーです。特にヘルスケア領域では、ワクチンや体外診断用医薬品などの事業に加え、AIやデジタル技術を活用した新たなヘルスケアソリューションの創出にも取り組んでいます。経営計画「Mission 2030」では、世界各国の最先端技術を持つスタートアップへの出資・提携を通じた新規事業創出を推進しており、2023年1月にはCVCファンドを設立。CVCを通じた取り組みに対して、2030年度までに最大約1億米ドルの投資を計画しています。
Aevice Healthは、シンガポールの南洋理工大学(NTU Singapore)からスピンオフして設立されたメディカルテック企業で、喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの慢性呼吸器疾患を対象とした遠隔モニタリングソリューションを開発しています。主力製品である「AeviceMD」は、胸部に装着して使用するスマートウェアラブル電子聴診器で、AIおよび電子聴診器技術を活用し、呼吸の異常音、呼吸数、心拍数などを継続的にモニタリングします。AeviceMDは、患者の自宅など医療機関外での継続的な呼吸状態の把握を可能にすることで、慢性呼吸器疾患の早期介入や個別化された疾患管理を支援することを目指しています。同社はシンガポールおよび米国で事業を展開しており、2025年には3歳以上の小児患者を対象とした米国FDA 510(k) clearanceを取得しました。
パートナーシップ
2025年1月15日、デンカは、ペガサス・テック・ベンチャーズと共同で運営するCVCファンドを通じて、Aevice Healthへの出資を実行しました。今回の投資はAevice HealthのPre-Series A funding roundの一環として行われ、デンカにとっては、AIを活用したウェアラブル電子聴診器技術を持つスタートアップとの戦略的な連携となります。
デンカは今回の出資を通じて、Aevice Healthが持つ呼吸器疾患向けAI技術・電子聴診器技術と、デンカが培ってきた感染性呼吸器疾患や免疫学に関する技術・知見を組み合わせ、「予防・診断・治療」の領域におけるデジタルヘルスへの取り組みを深化させることを目指しています。また、呼吸器疾患および関連疾患領域における新たなAI技術の共同研究開発にも取り組む方針を示しています。
Aevice Healthにとっても、デンカとの連携は、ウェアラブルデバイスと遠隔モニタリング技術を基盤とした呼吸器ケアソリューションの研究開発・グローバル展開を加速する機会となっています。Aevice Healthは2025年1月の追加資金調達について、調達資金を市場展開の拡大、研究開発の加速、世界各地の医療機関との戦略的パートナーシップ構築に活用すると説明しています。
デンカとの投資・連携以降、Aevice Healthは製品の規制・知財基盤をさらに強化しています。
2025年5月には、AeviceMDについて3歳以上の小児患者を対象とする米国FDA 510(k) clearanceを取得しました。これにより、特に小児喘息などの患者を対象とした在宅での継続的な呼吸器モニタリングへの展開可能性が広がっています。また、2025年6月にはAeviceMDに関する日本特許を取得。日本を含むグローバル市場での知的財産基盤を強化し、今後の事業展開に向けた基盤を整えています。さらに、2025年12月にはAeviceMDがオーストラリアTGA認証を取得しており、同社は米国・シンガポールに加えて、グローバルな規制・市場アクセスの拡大を進めています。
2026年8月には、Aevice Health、南洋理工大学(NTU Singapore)、デンカの3者による新たな共同研究プロジェクト「Cough Analysis Learning Model(Project CALM)」が開始されました。Project CALMでは、AIと音響信号処理技術を活用し、「咳の音」を解析して、呼吸器疾患に関連する特徴を識別するAIモデルの開発を目指しています。日常生活の中で発生する咳をデジタルバイオマーカーとして活用することで、医療機関外でも呼吸器疾患をより客観的に把握し、早期発見や疾患管理につなげることが期待されています。
この共同研究は、2025年の投資時点で掲げられた「Aevice HealthのAI技術とデンカの呼吸器疾患・免疫学に関する知見を組み合わせる」という連携方針が、具体的な産学共同研究へと発展した事例といえます。
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本案件では、Aevice Healthが有するAI・ウェアラブル技術と、デンカが持つヘルスケア領域の知見とのシナジーに着目し、両社の連携を投資につなげました。2025年1月には、Denkaからの追加投資がPegasus Tech Venturesを通じて実施され、Aevice Healthのグローバル展開や研究開発の加速を後押ししています。
また、ペガサスはスタートアップ側と大手企業側の双方の視点から、技術そのものだけでなく、「その技術を企業の既存事業にどのように組み込めるか」という事業シナジーを重視して案件を評価しています。本案件においても、Aevice HealthのAI・ウェアラブル技術をデンカのヘルスケア事業と組み合わせることで、従来の診断・治療領域にとどまらない新たなデジタルヘルス事業へ発展する可能性を見出しました。
さらに、ペガサスは投資後もスタートアップと事業会社の双方と継続的にコミュニケーションを取りながら、両社のニーズや技術シーズを整理し、具体的な協業機会につなげる役割を担っています。こうした継続的な支援を通じて、本案件は投資にとどまらず、デンカ、Aevice Health、NTU Singaporeによる新たな共同研究へと発展しています。
ペガサス・テック・ベンチャーズは、世界中のスタートアップへのアクセスとCVC運営の知見を組み合わせ、企業が自社だけでは見つけることが難しい技術・事業機会を発掘し、投資を起点とした具体的な事業連携へとつなげることを強みとしています。本案件は、こうしたグローバルなスタートアップ探索力と企業間の事業シナジー創出力を活かしたCVC支援の一例です。
参考資料
