提携事例1：
米国最大の石油精製企業のMarathon社とスタートアップ Blue Planet社 の戦略的提携
〜米Pegasus社のアドバイザリー支援により、Marathon社がBlue Planet社への直接出資に成功〜
統合型カーボン回収・活用施設の共同開発
＜概要＞
2024年、米国最大の石油精製業者かつ再生可能燃料の生産者である Marathon Petroleum Corporation（以下、Marathon社）は、独自のカーボン活用技術を有する Blue Planet Systems と戦略的連携を結び、その展開と開発を支援することとなりました。この取り組みの目的は、Marathon社の再生可能ディーゼル製油所に隣接してデモンストレーション施設を建設することで、豊富なCO₂供給源および原料や製品の物流拠点を確保することでした。
カリフォルニア州ベイエリアに本社を置く Blue Planet Systems (以下Blue Planet社)は、ジオミメティック鉱物化プロセス(自然模倣型の鉱物化反応を用いたCO₂固定技術)を通じてCO₂を恒久的に固定化しています。これは、炭素を含む排出流をカルシウム廃棄物と反応させ、石灰石骨材を生成するものです。この骨材は通常のセメントとすぐに混ぜて使用可能で、カーボン・ネガティブなコンクリートの製造が可能になります。
Marathon 社は、新技術の導入を推進するため、Pegasus Tech Ventures (以下Pegasus社)に初期段階の投資におけるデューデリジェンスと実行支援を依頼しました。カーボン回収・固定・活用は注力分野の一つであり、Pegasus 社のネットワークを通じて Marathon 社に Blue Planet 社 が紹介されました。
＜具体的な課題と解決策＞
世界では年間50ギガトンを超えるCO₂が排出されており、気候災害や季節の不安定化の要因となっています。排出量の3分の1以上は重工業によるもので、特にコンクリート産業は世界の温室効果ガスの5%以上を排出している最大級の排出源の一つです。データセンターなど大量のコンクリートを必要とする建設プロジェクトの増加により、これらの現場に対する環境面での監視はさらに強まっています。
このような懸念に応える形で、性能や適用性を損なうことなく、低炭素型の代替コンクリートを提供する新興企業が複数登場しています。加えて、Blue Planet社 のプロセスでは、隣接する排出源からCO₂を回収し、それを有効活用することで、排出を大気中に逃がさずに済むという、他の産業事業者との連携の可能性も生まれます。
Marathon社 と Blue Planet 社はこのような背景のもと、CO₂供給元としての Marathon社 と、商用パイロット施設を構築する Blue Planet社 の協業関係を築きました。この施設は Marathon 社の再生可能ディーゼル製油所に隣接して建設され、技術の実証とスケールアップを進めていきます。
Marathon 社はガスの管理・取り扱いのノウハウ、およびプラント全体のエネルギー管理に長けており、Blue Planet 社にとって優れたエンジニアリングパートナーとなりました。このデモ施設が完成すれば、Blue Planet社 の技術により生成された超低炭素燃料に対して、州・連邦の税額控除を通じて収益を生むことができます。
この提携により、Marathon 社と Blue Planet社 は、工業排出事業者が温室効果ガスの排出を削減し、同時に市場で価値のある製品を創出するという経済合理性のある道筋を示しました。
＜References＞
-
NEWS WIRE:
“Carbon Capture & Utilization Pioneer Blue Planet Systems Announces New Strategic Funding to Advance Commercialization of Technology.”
和訳: 「カーボン回収・活用の先駆者 Blue Planet Systems が商用化加速のための新たな戦略的資金調達を発表」
-
Marathon Petroleum Corporation 2023 Sustainability Report:
和訳: Marathon Petroleum Corporation 2023年サステナビリティレポートhttps://www.marathonpetroleum.com/content/documents/Responsibility/Sustainability_Report/2023_sections/2023_SustainabilityReport_Web_InnovateForTheFuture.pdf