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提携事例9:

日本の自動車部品メーカー大手アイシンと カナダAIスタートアップ  Element AI社の提携事例

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〜日本のアイシンが米ペガサスが運用するCVC

ファンドから戦略投資の実行、投資後にエレメントAI社との業務提携に成功〜

説明可能AIを工場に導入して歩留を改善

 

<概要>

アイシン精機株式会社(現・株式会社アイシン)とカナダのAIスタートアップであるElement AI(エレメントAI)は、2019年に人工知能(AI)の「説明可能性」に関する共同開発プロジェクトを開始しました。

 

この協業の主な目的は、AIの判断根拠を明確にし、自動車部品の生産工程における異常検知の精度と信頼性を向上させることでした。

 

Element.AI(本社:カナダ・モントリオール 以下、EAI)は、Jean-Francois Gagne 氏とYoshua Bengio氏 (PhD.)により創業された会社で、グローバルで企業向けに人工知能をベースとしたサービス・ソフトウェアソリューションを提供しています。 Yoshua Bengio氏は、人工知能のディープラーニングの世界三大巨頭の一人と言われ、チューリング賞(コンピューティング界のノーベル賞)を受賞しました。EAIは、人工知能の説明性を研究する専門チームを有し、人工知能の重要コンポーネントを自前で制作、要望に応じた組み合わせでサービスを提供できることを強みにしています。

 

アイシングループは、トヨタ自動車グループの1社として知られており、自動車部品およびエネルギー関連機器の開発・製造・販売を行う大手自動車部品メーカーです。2018年3月に優れた技術を有する企業の最先端技術を活用することを目的にファンド事業を行う連結子会社をシリコンバレーのPegasus Tech Ventures内に設立し、オープンイノベーション活動を進めてきました。Pegasus Tech Venturesは2019年Element AI社をアイシンに紹介し、50万ドルの投資を実行するに至った。同時に事業シナジーの検証をすすめ同年10月にはAIにおける共同開発のための戦略提携を発表しました

<具体的な課題と解決策>

アイシンでは、以前からロボットなどによる工場の自働化を進めてきました。しかし、依然として人の力に頼らざるを得ない工程が存在しており、その一つが製品の品質を見た目から判断する「外観検査」です。

 

 製品1点1点を徹底的に目視で検査するこの工程は、目を酷使するため検査員の身体的な負担が大きく、さらに不良を見逃すリスクがあるといった課題があります。アイシンはこの課題を解決して労働環境と品質の両方を向上させるために、AIを活用した自動検査システムの開発を進めています。

 

 しかし、実際の検査工程にAIを実装するには、越えなければならないハードルがいくつか存在します。その一つがAIの「ブラックボックス問題」です。

 

AIの深層学習(ディープラーニング)による判断は、しばしば「ブラックボックス」と称され、その決定プロセスが不透明であるという課題があります。この問題を解決するため、両社はAIの判断根拠を説明可能にする技術、すなわち「説明可能AI(Explainable AI)」の開発に取り組みました。これにより、製造現場での異常検知において、AIの判断理由を理解しやすくし、品質管理の向上を目指しました。 <図1>

 

この協業を通じて、アイシンは製造プロセスにおけるAI活用の信頼性を高め、品質低下の防止や生産効率の向上を図りました。また、AIの判断根拠が明確になることで、現場の技術者やエンジニアがAIの提案を受け入れやすくなり、実際に不良品の品質改善に伴い歩留まりが劇的に向上、AI技術の導入促進にも寄与しました。

 

なお、Element AIは2020年に米国のAI企業であるServiceNowに買収されましたが、アイシンとの協業はAI技術の産業応用における先駆的な取り組みとして注目されました。

 

<図1>

 

 

 

 

 

 

<参考資料>

  1. プレスリリース:カナダ「Element.AI」と人工知能分野で共同開発を開始

  2. 日経クロステック:可視化だけでは意味が無い、アイシン精機が「説明可能AI」の構築に挑む理由

 

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